な蠅になるんだつて。」
「それだつて、うそだい。」
 コーリヤはいひました。でも、心の中ではばけものが出て来やしないかとこはくて/\じつと身体をすくめました。
 すると、どこかで、ばけものが笛をふいてゐるやうな、笑つてゐるやうな気がしてきました。
「やい、だれだい、ほえるない。」
 リカがどなりました。コーリヤはとび上るほどおどろきました。
「おどかすない、リカ。」
 リカは笑ひました。
「はッはァ。」
 ふと、前の方にあかい火がみえて来ました。一つ、二つ、三つと。村ぢやあないでせうか。
「おい、リカ。」
 コーリヤはさけびました。
「ほら、あの光つてゐるの、なんだらう。」
「あれやあ火だよ。」
 リカはすましてゐました。
「村の家のあかりだよ。」
「村だつて? やァ、ばんざァい。」
 コーリヤはうれしがつてさけびました。こはばつてゐた顔が急にゆるんで、よろこびが顔中へひろがりました。もう、寒くも何ともなくなりました。
 コーリヤは、そりの中でくびをのばして、だん/\に、はつきりしてくる、光を、じつと、みつめました。
「ほうら。はしれッ。」
 リカも元気づいて、ぴゆう/\むちをふりまし
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