ないと云ふ事が如何《いか》がはしいです。そこで余程用心をしなくては行けません。先づ暫くその儘にして置くですな。その場にぢつとしてをらせて、暫く時期を待つですな。」
「でもいつまで待つたら宜しいと云ふお見込でせうか。もしその内に窒息でもいたしたら。」
「そんな事はないぢやありませんか。先刻のお話では、至極機嫌好くしてゐると云ふではありませんか。」
己は前の話を今一度初から繰り返した。
チモフエイはそれを聞いて、手に※[#「鼻+嗅のつくり」、第4水準2−94−73]煙草入を持つて、それをくるくる廻しながら思案をした。
「ふん。成程。わたしの考へでは外国なんぞをうろ付き廻るより、暫く現位置にぢつとしてゐた方が好いですな。丁度暇が出来たと云ふものだから当人もゆつくり反省して見たが好からう。無論窒息なぞをしては行けないから、多少の摂生上の注意をするが好いでせう。例之《たと》へば妄《みだ》りに咳なんぞをしないが好いです。その外色々注意の為やうもありませう。さてそのドイツ人ですが、わたしの考ではその男の申立には、十分の理由がありますね。兎に角※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−9
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