4−55]はその男の所有物です。イワンはその中へ、持主の許可を得ずして入り込んだと云ふものです。これが反対の場合だとさうでもありませんがね。そのドイツ人がイワンの持つてゐる※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の中へ潜り込んだのだとすれば、場合が違つて来ます。勿論イワンは※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]なんぞは持つてゐなかつたのですがね。兎に角※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]は人の所有物ですから、それを妄《みだり》に切り開ける事は出来ません。と申すのはその持主に代価を辨償せずに、切り開ける事は出来ないのです。」
「併し人命を助けるのですから。」
「さやう。併しそれは警察権に関係します。その問題は警察へ持つて行かなくては駄目です。」
「ところでイワンの行方《ゆくへ》が分からないと云ふ事になつたらどうでせう。何かあの人に用事でも出来たと云ふ場合は。」
「あの人にとはイワンにですか。ふん。なに、休暇中の事ですから、どこにゐようと、何をしてゐようと構はぬが好いです。ヨオロツパを遊歴してゐようが、ゐまいが、
前へ 次へ
全98ページ中30ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング