かなかきれいなのがいました。わたしはまた、小さくてすばしっこい、黒いぶちのある赤黄《あかき》いろいとかげまで好《す》きでしたが、へびは気味《きみ》がわるかった。もっともへびは、とかげのようにちょいちょい出っくわしはしませんでした。きのこは、そのへんにはめったにないので、きのことりには、白かばの森へ行かなければなりません。そこでわたしは、出かけようとしました。わたしは一生のうちで、あの森くらい好きだった場所《ばしょ》はありません。きのこがある、野いちごがある、かぶと虫もいれば、小鳥もいる。針《はり》ねずみ、りす、それから、わたしの好きで好きでたまらなかったあのしめっぽい落葉《おちば》のにおい。……わたしは今これを書きながら、白かばの林のにおいをしみじみかぐような気持がします。そういう感《かん》じは、一生のあいだ、いつまでも消《き》えずに残《のこ》っているものです。
するとふいに、あたりの深い静《しず》けさのうちに、わたしははっきりと、「おおかみがきたよう!」という悲鳴《ひめい》を聞きました。わたしは、きゃっと叫《さけ》ぶと、こわさのあまり夢中になって、ありったけの声でわめきたてながら、
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