へとびだした。
見ると、ああ、なんてすばらしい町だろう。今までついぞ、こんなりっぱな町は見たことがない。これまでいたところは、通りにたった一つしかあかりがなく、夜になるとまっ暗《くら》だった。ひしゃげたような、木づくりの低《ひく》い家《や》なみは、みんなよろい戸をおろしてしまう。日が暮《く》れだすと、通りには、人っ子ひとりいなくなって、みんなが、うちにとじこもったあとには、なん百|匹《ぴき》、なん千匹という犬のむれが、一|晩《ばん》じゅう、うなったり、ほえたりしていたものだ。
だがそのかわり、あすこは、とてもあったかだったし、食べるものもちゃんとあったけれど、ここといったら――ああ、何か食べさせてくれないかなあ。おまけにここは、なんてそうぞうしい、やかましいところなんだろう。なんてまぶしくって、人間《にんげん》がどっさりいて、馬だの車《くるま》だのが走《はし》りまわって、おまけに、寒《さむ》い身をきるような風が、吹《ふ》きまわっているのだろう。へとへとになった馬のからだからも、熱《あつ》い息《いき》をはく馬の鼻《はな》からも、こおった湯気《ゆげ》がふうふうたっている。かさかさした雪
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