「い子だから決めてくれ! 話がついたら一筆書いて、坊さんに渡してくれ、そうすれば、やっこさんがすぐおまえの書きつけをわしに届けてくれるからなあ、それから後はもうおまえの邪魔はせんから、ヴェニスへでもどこへでも行くがよい、坊さんが自分の馬をつけて、おまえをワロヴィヤの宿場まで送ってくれるよ……」
 老人はただもう有頂天になって、手紙を書いたり、馬の用意に使いを出したりして、前菜《オードブル》とコニャクを出させた。彼は悦《えつ》に入ると、きまって口数が多くなるのだが、このときはなんとなく控え目にしているようであった。ドミトリイ・フョードロヴィッチのことなどは、おくびにも出さなかった。しかし別れを惜しむといった様子はさらに見えなかった。むしろなんと言っていいのかわからないようにさえ見受けられた。イワン・フョードロヴィッチもすぐそれに気がついた。『だが、親爺もいいかげんおれには飽きたろうな』と彼は肚の中で思った。玄関までわが子を送り出すとはじめて、フョードル・パーヴロヴィッチも少し騒ぎ出して、接吻するつもりでそばへ近寄った。しかしイワン・フョードロヴィッチは明らかに接吻を避けるつもりで、とっさ
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