刀Eフョードロヴィッチはまだ眠らないで物思いにふけっていた。彼はこの夜たいへん遅く、二時過ぎに床についた。しかし、今は彼の思想の推移を細々と伝えることもよしておこう。それに今はそんな霊魂に立ち入っている時ではない。この霊魂についてはやがて語るべき順番がくるだろう。それに、たとえ今何かを読者に物語ろうとしてみたところで、それは非常にむずかしいこととなるに違いない。なぜならば、彼の頭の中にあるのは、思想と名づくべきものではなくて、何かしらひどく取りとめのない、しかも恐ろしく入り乱れたものであったからである。彼自身にも自分の心が、すっかり混乱してしまったような気がした。かてて加えて、奇態な、まるで思いもかけぬいろいろの欲望が目ざめて、彼を苦しめるのであった。たとえば、もう十二時を過ぎたような時刻なのに、突然、矢も楯《たて》もたまらず、階下へおりて扉をあけ放して傍屋《はなれ》へ行って、スメルジャコフを打ちのめしてやりたくなる、と言ったようなことであった。しかし、もし誰かにどういうわけでと聞かれたら、あの下男が憎らしくてたまらないのだ、この世にまたとないほどひどい侮辱を自分に加えたやつだ、という
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