ト行くわが子の姿を見えなくなるまで、嘲笑《あざわら》うような顔つきで見送っていた。
「あいつはいったいどうしたというんだ?」と、彼はイワン・フョードロヴィッチの後ろからはいって来たスメルジャコフに向かって尋ねた。
「何かに腹を立てていらっしゃるのでしょうが、どうなすったのやら、さっぱりわかりませんよ」と、こちらは逃げ口上でこうつぶやいた。
「ええ勝手にしやがれ! 怒るやつには怒らしとくさ。おまえもサモワルを出しといて、さっさと出て行け、さあ早く、なんぞ変わった話はないのか?」
 そこで、今しがたスメルジャコフがイワン・フョードロヴィッチに哀訴したような、うるさい質問が始まった。つまり彼が待ちに待っている例の女客のことばかりであるから、それをここにくだくだしくくり返すことは避けよう。半時間の後には家はすっかり戸締まりができた。そして愛欲に取りのぼせた老人は、一人で部屋の中を歩き回って、約束の五つのノックの合い図が今にも聞こえぬかと、胸をわくわくさせて待ち構えながら、ときどき暗い窓の外をのぞいて見たが、『夜』のほかには何一つ眼にはいるものはなかった。
 もう非常に遅い時刻ではあったが、イワ
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