フ毒になって、ああ申したのでございますよ、わたくしがあなたの立場におりましたら、こんなことに掛かり合うよりは……いっそ何もかも捨てて、どこかへ行ってしまいますよ……」ぎらぎらと光るイワン・フョードロヴィッチの眼を、思いきり露骨な表情で眺めながら、スメルジャコフはこう答えた。二人とも沈黙に落ちた。
「どうやら貴様は大ばか者らしいぞ、そして、もちろん、恐ろしい悪党だ!」こう言って、突然イワン・フョードロヴィッチはベンチから立ち上がった。それからすぐに耳門の中へはいってしまおうとしたが、不意に立ち止まって、スメルジャコフのほうをふり向いた。何かしら変なことが起こった。イワン・フョードロヴィッチは思いがけなく痙攣《けいれん》でも起こしたように、唇《くちびる》をかみしめて、拳《こぶし》を握りしめた――そして次の瞬間には、スメルジャコフにおどりかかりそうなけんまくであった。こちらは少なくともその同じ刹那《せつな》にそれを見てとって、思わずぎくりとして、全身を後ろへ退いた。しかし、その瞬間はスメルジャコフにとって無事に経過した。イワン・フョードロヴィッチは黙ったまま、しかし何やら思い惑った様子で、無
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