ネ、と推察した。イワン・フョードロヴィッチはちらと相手を見て立ち止まった、そして自分がつい今のさきそう思ったように、さっさと通り過ぎてしまわないで、こうして立ち止まったことを考えると、彼は身内の震えるほど腹が立ってきた。憤怒と憎悪をもって、彼はスメルジャコフの去勢僧のように痩せこけた顔や、きれいに櫛《くし》で梳《と》き上げた両|鬢《びん》や、小さい冠毛のようにふくらました前髪をじっとにらんだ。こころもち細めた左の眼はちょうど、『いかがですな、通り過ぎておしまいなさらぬところを見れば、お互いに利口なわたくしどもの中には、何か御相談ごとがあるらしゅうござんすな』とでも言っているように、薄笑いを浮かべて、またたきをしていた。イワン・フョードロヴィッチは身震いをした。
『どいてろ、やくざ野郎、おれは貴様なんぞの仲間じゃないぞ、ばか野郎!』そうどなりつけてやりたいと思ったのだが、自分ながら意外なことには、まるきり別なことばが口をついて出てしまったのである。
「どうだい、お父さんはまだ寝てるかい、それとも、もう起きたかい?」と、自分でも思いがけないくらい静かに、すなおに彼はこう言った。そして、やは
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