なかった。そもそもこれから嫌悪の念がきざし始めたのである。その後、家庭内にごたごたが起こって、グルーシェンカが現われたり、兄ドミトリイの騒ぎがもちあがったりして、いろいろめんどうなことが続いた時、二人はそのことについても語り合った。もっとも、スメルジャコフはこの話をするときに、ひどく興奮した様子を見せたけれど、いったいそれが落着すればいいと自分で思っているのか、とうてい正確に突き止めることはできなかった。そればかりか、不用意のうちに現われる彼の希望の茫漠《ぼうばく》として支離滅裂なことにむしろ驚かされるくらいであった。彼はいつも、何かを聞き出そうとするもののように、前から考えているらしい遠まわしな質問を持ちかけるのであったが、それがなんのためかは説明はしなかった。そして非常に熱心に何かを尋ねている最中に、突然ぴったりと口をつぐんでしまって、まるで別なことへ話題を転ずることがあった。しかし、ついにイワン・フョードロヴィッチを極度にまでいらだたせて、その心に激しい嫌悪の情を起こさせたのは、最近スメルジャコフが彼に対してありありと示すようになった、一種特別な忌まわしいなれなれしさであった。
前へ
次へ
全844ページ中796ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング