ヘ、何よりも先にまずこの人をかつぎ出すじゃないか。ときには、アリョーシャ、笑っちゃいけないよ、僕はいつか一年ばかり前に劇詩を一つ作ったんだ。もしも、僕につき合ってもう十分間ほど暇をつぶすことができるなら、一つおまえに話して聞かしてもいいんだけれど」
「兄さんが劇詩を書いたんですって?」
「ううん、どうしてどうして」と、イワンは笑いだした、「今までに、かつて二行と詩なんか書いたことはなかったんだが。その劇詩はただ頭の中で考えて、今もなお覚えているというだけの話だ。しかし、熱心に考えたものだよ。おまえは僕の最初の読者、いやいや、聞き手なんだ。全く作者にとってはたった一人でも聞き手は取り逃がしたくないもんだからな」とイワンは薄ら笑いをもらした。「話そうか、どうしようかな?」
「僕は喜んで聞きますよ」とアリョーシャは言った。
「僕の劇詩は『大審問官』というんだ。ばかばかしい物だけれど、おまえに聞いてもらいたいんだよ」

   五 大審問官

「ところで、これには、前置きを省くわけにはいかないんだよ、つまり、文学的序文というやつをな、ふん」とイワンは笑った、「それにしても、たいした作者になったも
前へ 次へ
全844ページ中731ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング