サの両親は『名誉ある官吏で、教養ある紳士淑女』なんだよ。僕はいま一度はっきり断言するが、多くの人間には一種特別な性質がある。それは子供の虐待だ。しかも、子供に限るのだ。他の有象無象に対するときは、最も冷酷な虐待者も、博愛心に富み、教養の豊かなヨーロッパ人でございといった顔をして、いやに慇懃《いんぎん》で謙遜《けんそん》な態度を示すけれど、そのくせ、子供をいじめることが大好きなんだ。この意味において子供そのものまでが好きなのだ。つまり、子供のがんぜなさが、この種の虐待者の心をそそるのだ。どことして行く所のない、誰ひとり頼る者もない小さい子供の、天使のような信じやすい心――これが虐待者の忌まわしい血潮を沸かすのだ。あらゆる人間の中には野獣が潜んでいる。それは怒りっぽい野獣、責めさいなまれる犠牲者の泣き声に情欲的な血潮をたぎらす野獣、鎖を放たれて抑制を知らない野獣、淫蕩《いんとう》のためにいろいろな病気――足痛風だとか、肝臓病だとかに取っつかれた野獣なのだ。で、その五つになる女の子を教養ある両親がありとあらゆる拷問《ごうもん》にかけるのだ。自分でも何のためやらわからないで、ただむしょうに打つ
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