を聞くのが大好きなんだ。おまえはしっかりした人間だね。アレクセイ、おまえが修道院を出るっていうのは本当かい?」
「本当です。長老様が世の中へ僕をお送りになるのです」
「じゃ、また世間で会えるね。僕が三十そこそこになって、そろそろ杯から口を離そうとする時分に、どこかで落ち合うことがあるだろうよ。ところで親父は自分の杯から七十になるまで離れようとしないらしい。いや、もしかすると、八十までもと空想してるのかもしれない。自分でもこれは非常にまじめなことだと言ったっけ。もっとも、ただの道化にすぎないがね。親父は自分の肉欲の上に立って、大磐石でもふまえたような気でいるんだ……が、三十を過ぎたら、それより他には立つ足場がないだろうからね、全く……それにしても七十までは卑劣だ、三十までがまだしもだよ。なにしろ、自分を欺きながらも『高潔の影』を保つことができるからね。今日ドミトリイには会わなかったかな?」
「ええ会いませんでしたよ、ただスメルジャコフには会いました」と、アリョーシャは下男との邂逅《かいこう》を手短かに兄に話した。イワンは急に、ひどく気がかりになったらしく耳を傾け始め、何やかやと問い返しさ
前へ 次へ
全844ページ中683ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング