ら呼び出してもらうという手もあった。しかし、彼が料理店のそばへ近づいたばかりのとき、不意に一つの窓があいて、兄のイワンが窓から下を見おろしながら呼びかけた。
「アリョーシャ、おまえは今すぐにここへはいって来るわけに行かないかえ、どうだい? そうしてくれると実にありがたいんだが」
「ええ、いいのくらいじゃありませんよ、でも、こんな服装ではいって行ってもいいかどうか、それがわからないだけです」
「だって、ちょうどいいあんばいに僕は別室に陣取ってるんだ。かまわずに玄関からはいっておいでよ、僕が今迎えに駆け出して行くから……」
一分間の後、アリョーシャは兄と並んで坐っていた。イワンは一人きりで食事をしていたのである。
三 兄弟相知る
もっとも、イワンが陣取っていたのは別室ではなかった。それはただ、窓のそばの衝立《ついたて》で仕切っただけのところにすぎなかったが、それでも中に坐っていると、はたの人からは見えなかった。その部屋は、入口から取っつきの部屋で、横のほうの壁ぎわにはスタンドがあり、ボーイがあちこちと絶えず動き回っていた。お客といっては、退職の軍人らしい老人がただ一人、隅っこ
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