」
「ええ、手品です、ちょっとした手品です」二等大尉は相変わらずささやくのであった。彼は口を左のほうへゆがめて、左の眼を細くして、まるで吸い付くかのようにアリョーシャを見つめていた。
「いったい、どうしたのです、どんな手品なんです?」と相手はすっかり恐れをなして、叫んだ。
「ほら、御覧ください、これです!」不意に、二等大尉は金切り声を立てた。
彼は今まで話をしている間じゅう、右手の拇指《おやゆび》と人さし指で、角のところをつまんでいた二枚の紙幣を、相手のほうへ差し出してみせたかと思うと、いきなり荒々しく引っつかんで、皺《しわ》くちゃにしながら、右手でしっかりと握りつぶしてしまった。
「わかりましたか、わかりましたか?」まっさおな顔をして、夢中になりながら、彼はアリョーシャに向かって叫んだ。やがて、いきなり拳《こぶし》を振り上げると、皺くちゃになった紙幣を力いっぱい砂の上にたたきつけた。「わかりましたか!」紙幣を指さして見せながら、彼は再び金切り声で叫んだ、「まあ、このとおりでござい!」
と言って、急に彼は右の足を上げて、荒々しい憤怒の色を浮かべながら、靴の踵《かかと》で紙幣を踏みつ
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