いますから。あれがいなかったら、あれの優しいことばがなかったら、それこそ、わたくしどもの家は地獄も同然なのでございますよ。あれはワルワーラの心までも、慰めてくれました。しかし、ワルワーラのことも、やはり悪く思わないでくださいまし。あれもやはり天使ですけれど、ただはずかしめられたる天使なんでございますからね。あれがここへまいりましたのは夏のことでしたが、そのころは十六ルーブルの金を持っておりました。それは子供に稽古《けいこ》などしてやって、もうけた金なので、九月――といって、つまり今ごろはペテルブルグへ帰るつもりで、それを旅費に取っておいたんでございます。ところが、わたくしどもがその金を取って使ってしまいましたので、あれはもう帰ろうにも金がない、というような始末なのでございます。それにまだ帰れもしないと申すわけは、わたくしどものために懲役人のような働きをしているからでございます。なにしろ、やくざ馬に馬具や鞍《くら》をつけて、こき使うようなありさまなんでございますからね。皆の者の世話をする、洗濯をする、雑巾《ぞうきん》がけをする、床を掃《は》く、母ちゃんを床の上に寝かしてやる――ところが、
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