ざめと泣きくずれた。アリョーシャは長椅子から立ち上がった。
「いいえ、なんでもありません、なんでもありません!」と、彼女は泣きながら続けた、「これは昨夜いろんなことを考えたので、頭が変になってるからですの。わたしはね、あなたやお兄さんのようなお友だちのそばにいますから、いっそう気丈夫ですの、……だって、あなたがたお二人がけっしてわたしを……お見すてなさらないことは、わたしもよく承知してますからね」
「あいにく、僕はひょっとすると、明日あたりモスクワへ向けて出立して、永久にあなたを見すてなければならないかもしれません、……これは残念ながら、考えなおすわけにはゆきません……」イワンはだしぬけに、こう言った。
「明日、モスクワへ!」不意にカテリーナの顔が曲がってしまった、「でも……、でもなんて運がいいんでしょうね!」と彼女は叫んだが、その声は一瞬のあいだにすっかり変わってしまった。もう泣いたあとも残らないまでに、きれいに涙を拭き取っていた。つまり、一瞬のあいだに、彼女は恐ろしい変調をきたして、アリョーシャを呆然《ぼうぜん》たらしめたのであった。今しがた、心をひきむしられたように泣いていた、は
前へ 次へ
全844ページ中553ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング