「今わたしは、あなたに何もほのめかす気もありませんし、この幕を上げるつもりもありませんよ。けれど、はいって御覧なすったら、御自分であすこの様子がおわかりになりましょう、本当に恐ろしいことです。ひどく突拍子もない狂言ですよ! あの人はイワンさんを愛してらっしゃるのに、御自分では一生懸命にドミトリイさんを愛していると、強情を張りなさるって。恐ろしいわねえ! わたしはあなたといっしょにはいって行って、もしも追い出されなかったら、しまいまでじっとすわっていましょうよ」
五 客間における破裂
しかし、客間ではもう話が済んでいた。カテーリナは思いきったような風をしていたが、ひどく興奮していた。ちょうど、そのときアリョーシャとホフラーコワ夫人がはいって来たのであるが、イワンは席を立って帰ろうとしていた。彼の顔はいささか青ざめていたので、アリョーシャは心もとなくのぞきこんだ。というのは、今アリョーシャにとって一つの疑惑が、いつのころからか彼を悩ましていた一つの不安な謎が、解決されようとしているからであった。一月ほど前から彼はいろんな方面から、兄のイワンがカテリーナに思いを寄せて、実際にミー
前へ
次へ
全844ページ中538ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング