ュく言い含めたことを思い出した。
『いったいどういうわけなんだろう?』と今になってアリョーシャは不意に気がついた、『お父さんが僕ひとりに何かこっそり話したいことがあるにしても、なにも僕がこっそりはいる必要はないんじゃないかな? きっと、昨日は興奮して何か別のことを言うつもりだったのに、よう言えなかったんだろう』と彼はひとり決めをした。それにしても、マルファが彼のためにくぐりをあけながら(グリゴリイは病気をして離れに寝ていた)、彼の質問に対して、イワンはもう二時間も前に外出したと答えたとき、彼はひどく喜んだ。
「お父さんは?」
「もうお起きなすって、コーヒーを召し上がっていらっしゃいますよ」とマルファはなんだかそっけない調子でこう答えた。
アリョーシャは中へはいった。老人はスリッパをはき、古ぼけた上着をひっかけ、たったひとりで、食卓に向かい、別にそれほどの注意も払わずに、ただ気をまぎらわすために、何かの勘定書きに眼を通していた。この家の中に、彼はたった一人きりであった(スメルジャコフは昼の物を買いに出かけて行ったのである)。しかし、彼の心にかかっているのは勘定書きではなかった。彼は早起
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