「や、もうよい、行きなさい」
 こう言ってパイーシイ主教は彼を祝福した。修道院を出て行くとき、この思いもかけないことばを思いめぐらしているうち、アリョーシャは、急に今まで自分に対して厳重冷酷であったこの主教が、今にしてみれば思いもよらない親友で、また、暖かい気持で自分を愛してくれる新しい指導者だ、ということがやっとわかってきた、――まるでゾシマ長老が死に面して、この人に遺言でもしたかのようであった。
『たぶん、お二人のあいだに、それくらいのことがあったのかもしれない』アリョーシャはふと考えた。たった今、彼の聞かされた思いがけない学者らしい議論は、ほかならぬこの議論は、パイーシイ主教の情熱に富んだ心を証明している。彼はできるだけ急いでアリョーシャの若い知性に、世の誘惑と闘うべき武器を与え、遺言によって自分に託された若い魂に、われながらこれ以上堅固なものを想像しえないくらいに、堅固な牆《かき》をめぐらそうとしたのである。

   二 父のもとにて

 アリョーシャはまず最初に父のところへおもむいた。そばまで来たとき、彼は昨日、父親が、なるべくイワンに見つからないようにそっとはいって来いと、
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