するのが大好きであった。そのために敷布をひっかけて法衣の代わりにして、何か香炉《こうろ》の代わりになるものを猫の死骸の上で振り回しながら、讃美歌をうたったものである。これは厳重な秘密裡《ひみつり》にこっそりと取り行なわれた。ある時、そういうお勤めをしているところを、グリゴリイに見つけられて、鞭《むち》でこっぴどく折檻《せっかん》されたことがある。するとこの子供は片隅へ引っこんでしまって、一週間ばかりというもの、そこから白い眼を光らせていた。『このできそこないはわしやおまえを好いていねだよ』とグリゴリイは妻のマルファ・イグナーチエヴナに言い言いした。『いや、誰ひとり好いていねんだよ。それでも手前は人間なのかい?』と、彼はだしぬけに当のスメルジャコフに向かって、こんな風に言うことがあった。『うんにゃ、手前は人間じゃねえ。湯殿の湿気からわいて出たやつだ、それが手前なんだぞ……』それはあとでわかった話だが、スメルジャコフはいつまでもこのことばを恨みに思っていた。グリゴリイは彼に読み書きを教えた。そして子供が十二歳になったとき聖書の講釈をしにかかった。が、それはすぐ失敗に終わった。まだほんの二度
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