こんな金が寝かしてあることは下男のスメルジャコフの他には誰ひとり知る者はない。この男の正直なことを、親爺はまるで自分と同じくらいに信じきっているんだからな。ところで、親爺はもう今日で三日か四日、グルーシェンカがその金包みを取りに来るのを当てにして、待ちあぐねているんだよ。親爺のほうから知らせてやったので、あの女からも『行くかもしれない』という返事があったそうだ。だからもしあの女が親爺のところへやって来るようなら、おれはあの女といっしょになんかなれやしないだろう? なんでおれはこんな所に内緒で坐っているのか、何を見張っているのか、これでおまえにも合点がいったはずだな」
「あの女《ひと》を見張ってるんでしょう?」
「そうだよ。ところで、ここのお引摺《ひきず》りの家の小部屋をフォマという男が借りてるんだよ。このフォマは土地の者で兵隊あがりの男なのさ。夜だけ、ここで夜番に使われていて、昼間は松鶏を撃ちに出かけたりしているのだ。おれはまんまとこの男のところへはいり込んでいるんだが、この男も、ここの家の母娘もおれの秘密は知らないのだ。つまり、おれがここで何を見はってるかってことを知らないんだよ」

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