ませんよ」
「知ってるよ、出さないってことは百も承知さ。まして、今はなおさらなんだよ。さっきの話のほかに、おれはまだこんなことを知ってるんだ。ついこのごろ、ほんの二、三日前、いや、ひょっとしたらまだ昨日あたりかもしれんが、親爺は、グルーシェンカがほんとに冗談でなしにおれと不意に結婚するかもしれないってことをはじめてまじめに[#「まじめに」に傍点](このまじめにという点に気をつけてくれ)かぎだしおったのだ。親爺もあいつの気性を知ってるんだよ。あの牝猫のさ。だから、あの女にうつつを抜かしている当の親爺が、この危険を助長するために、わざわざおれにお金を出してくるはずはないさ。しかしまだ、それだけじゃない、もっと重大なことを聞かしてやるよ。それはこうだ、もう五日ほど前に、親爺は三千ルーブルの金を抜き出して百ルーブルの札にくずし、大きな封筒に入れて封印をべたべた五つも押した上に、赤い紐を十文字にかけたものだ。どうだい、実に詳しく知ってるだろう! 封筒にはこういう上書きがしてあるのさ、『わが天使なるグルーシェンカへ――もしわがもとに来たりなば』これはしんと寝静まった時こっそり自分で書きつけたのだ。
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