えはあの女がどんなにイワンを崇拝し、尊敬しているか知らないのかい? それにあの女がおれたちふたりを見比べて、こんな、おれのような人間を愛することがどうしてできるものか、おまけに、こちらであんなことをしでかした後でさ?」
「でも僕は、あの女《ひと》の愛してるのは兄さんのような人で、けっしてイワンのよう人じゃないと思います」
「あの女の愛しているのは自分の善行で、けっしておれじゃない」突然ドミトリイ・フョードロヴィッチはわれにもなく、ほとんど毒々しい調子で口走った。彼は笑いだしたが、一瞬の後、その眼がきらりと光った。彼はまっかになって力いっぱい拳《こぶし》でテーブルをたたきつけた。
「おれは誓って言うが、アリョーシャ」と、彼は自分自身に対する激しい真剣な憤りを現わしながらわめいた。「おまえが信じるか、信じないかどちらだってかまわん。おれは神聖なる神にかけて、主キリストにかけて誓うが、今おれはあの女の高潔な感情をあざけったけれど、このおれの魂なんか、あの女の魂に比べたら、百万倍も下劣だってことも、あの女のそうしたすぐれた感情が天使の心のように真実なことも、自分でちゃんと知りきっている! おれ
前へ 次へ
全844ページ中335ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング