と向きを変えるとテーブルに近寄って、引き出しをあけて、五千ルーブルの五分利つき無記名手形を取り出した(それはフランス語の辞書にはさんであった)。それから黙ったまま女に見せたうえ、たたんで渡した。そして自分で玄関へ出る扉をあけると、一足さがってうやうやしく腰をかがめて、相手の胸にしみとおるような会釈をしたものだ。本当のことだよ! あの女は全身でぎくりとおののいて、一秒間おれをじっと見つめながら、ひどく青ざめて、ほんとに卓布のような顔をしていたが、いきなり、何も言わずに、突発的ではあったが、ほんとに物柔らかに、静かに深くおれの足もとへ身をかがめて、額が地につくほどの、女学生式ではなく純ロシア式のお辞儀をしたんだ! そして急に飛び上がると、駆け出してしまったんだ。あの女が飛び出した時、おれはちょうど軍刀を吊《つ》っていたので、それを引き抜いてその場で自殺をしようと思ったんだよ。何のためか自分でもとんとわからない、いうまでもなくばかげきったことではあったが、おそらく嬉しさのあまりに違いない。おまえにはわかるかどうか知らんが、ある種の歓喜のためには、自殺もしかねないものだよ。だが、おれは自殺しな
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