べようなどとはしなかった。彼女は人から可愛がられ、重宝がられていた。なにしろ仕立物にかけては立派な腕を持っていたからな。ほんとに器用だったよ、それでいて賃金を請求したりはしなかったよ、ただ親切ごころからしてやることなんで、しかし、くれるときには遠慮せずにもらっていたがね。だが中佐のほうは、どうして、なかなかそんなどころじゃない! 中佐はその町で第一流の名士の一人だったからなあ。豪勢な暮らしをしていて、よく町じゅうの人を招待して、晩餐会や舞踏会をやったものだ。ちょうどおれがその町へ着いて大隊へはいった時には、ちかぢかに中佐の二番娘がやって来るというので、町じゅうその噂《うわさ》でもちきりだった。なんでも、美人の中でもずばぬけた美人で、こんど首都のさる貴族的な女学院を卒業したばかりだということだった。この二番娘というのが、あのカテリーナ・イワーノヴナなんで、つまり中佐の後妻にできた娘なのさ。もう亡くなっていたが、その後妻は、名門の出で、なんでも将軍の家に生まれた人だったけれど、確かな筋から聞いたところによると、少しも持参金を持って来なかったそうだ。とにかく親類があったというだけで、先にどん
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