から、フョードル・パーヴロヴィッチの家の塀へもどうにかしてはいあがって、身体《からだ》に障《さわ》るとは知りながら、妊婦の身をも顧みず、そこから飛びおりたものであろう。グリゴリイはマルファ・イグナーチエヴナのもとへ駆けつけると、彼女をリザヴェータの介抱にやり、自分はちょうどおりよく近所に住んでいる年寄りの産婆を迎えに飛び出して行った。赤ん坊は助かったが、リザヴェータは夜の引き明けに死んでしまった。グリゴリイは赤ん坊を抱き上げて家へ連れ戻ると、妻を坐らせて、その乳房へ押しつけるようにして、赤ん坊を彼女の膝へ載せた。『神の子だよ――孤児ちゅうもんは、みんなの親類だが、おいらにとっちゃあ、ましてのことじゃ。こりゃあ家の赤ん坊がおいらに授けてくれたのに違えねえだが、それにしてもこの子は、悪魔の息子と天使のあいだにできたもんだぞ。育ててやるがええだ、もうこれからさきゃ泣くでねえだぞ』そこでマルファ・イグナーチエヴナはその子供を育てることになった。洗礼を授けてパーヴェルと命名されたが、父称は誰いうとなく、フョードロヴィッチと呼ばれるようになった。フョードル・パーヴロヴィッチはなんら抗議を唱えるでも
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