時とすると、ひどく気が短いし、時とすると物を見る眼がないんですからね、だが、あなたは別です」
「あら、そんなこと本当にしなくってよ! アレクセイさん、わたしなんて幸福なんでしょう!」
「そう言ってくださるので、僕もたいへん嬉しく思いますよ、リーズさん」
「アレクセイさん、あなたはなんという立派なかたでしょうね、だけど、どうかするとまるで衒学者《ペダント》のようだわ……でもよく見てると、けっして衒学者《ペダント》じゃないのね。戸口を見て来てくださらないこと、……そっとあけて見てちょうだい、お母さんが立ち聞きしてやしなくって?」神経的なあわてた調子で、だしぬけにリーズはささやいた。
アリョーシャは立って戸をあけて見た。そして誰も立ち聞きしてはいないと報告した。
「いらっしゃいな、アレクセイさん」しだいに顔を赤らめながらリーズはことばを続けた。「お手を貸してちょうだい、ありがとう。あのね、わたしあなたにたいへんなことを白状しなければならないのよ。昨日の手紙は冗談じゃなくって、わたしまじめに書いたのよ……」
と、彼女は片手で眼を隠した。白状するのが恥ずかしかったのであろう。不意に彼女はアリョーシャの手を取って、あわてて、三たび接吻した。
「ああ、リーズさん、よくしてくれましたね」と彼は嬉しそうに叫んだ、「僕だってあの御手紙がまじめだってことはよく知っていたのですよ」
「御承知だったのですって、まあ本当に!」と彼女は自分の口から男の手を離しはしたが、やっぱり放してしまおうとはしないで、ひどく赤い顔をしながら、楽しげなかすかな笑い声を立てるのであった。「わたしが手を接吻してあげれば、『よくした』なんて」
けれど、彼女のとがめだては不公平であった。なぜといって、アリョーシャもやはり、非常に心を取り乱していたからである。
「僕はいつだって、あなたのお気に入りたいと思ってるんですよ、だが、どんなにしていいかわからないもんだから」彼もまた顔を赤らめながら、あわててつぶやいた。
「アリョーシャ、あなたみたいな冷淡な、ひどいかたはありませんわ。そうじゃなくって! 勝手にわたしを自分のお嫁さんに決めて、安心してるんですもの! あなたは、わたしがあの手紙をまじめに書いたものと、信じきってらっしゃるんでしょう。どうしたということでしょうね! だってあんまり勝手じゃなくて、――ええ、そうよ!
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