す。どうか、アレクセイ様、お兄様にようくお礼を申してくださいまし。とんでもありません。あなたの御得心のいくように、あの子をなぐるわけにはとてもいきませんでございますよ!」
 彼は長談義を、元のような恨めしげな、キ印《じるし》らしい語調で結んだのであった。しかし、アリョーシャは、彼が自分を信用していると感じた。誰か他の人が自分の立場にあったとしたら、けっしてこの男は自分にこんなことを『語り』もすまいし、今、自分に話したようなことを報告もしないだろうと思った。それがアリョーシャを元気づけたが、胸は涙に震えるばかりであった。
「ああ、どうかしてあのお子さんと仲なおりがしたいもんです!」と彼は叫んだ、「もし、あなたがうまく取り計らってくだされば……」
「いや、全くでございますよ」と二等大尉はつぶやいた。
「しかも、今申し上げようと思うのは別のことです。まるで別のことです。ようござんすか」アリョーシャは叫び続けた、「ようござんすか! 僕はあなたにことづてを頼まれているんです。あの僕の兄のドミトリイは許嫁《いいなずけ》の妻をもはずかしめたのです。それは実に気高い令嬢なんですが、あなたもきっとお話をお聞きになったでしょう。僕はあの人の受けた侮辱を、あなたに打ち明ける権利を持っています。いや、打ち明ける義務があると言ってもいいくらいです。なぜと申しますと、あの人はあなたがお受けになった侮辱を聞き、あなたの不仕合わせな境遇も何もかも聞いたので、たった今、……ほんの今さっき……この扶助金をあの人の名であなたにお届けするようにと、僕にお頼みなすったからです、……もっとも全くあの人ひとりの名で、あの人を捨てたドミトリイの名ではありません。けっしてそんなことはありません。また弟たる僕の名でもありません。ほかの誰の名でもありません、全くあの人ひとりの名なんです! あの人はぜひとも納めていただくようにと、拝まぬばかりに頼みました、……だって、あなたがたお二人は、同じ人間から侮辱を受けたんじゃありませんか、……ですから、あの人があなたのことを思い出したのも、自分であなたと同じような侮辱を受けた時でした(つまり侮辱の程度が同じわけです)。それですから、まあ、妹が兄を助けるというようなものです、……あの人はあなたがお困りになっているのを承知していますから、自分を妹だと思って、この二百ルーブルという金を
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