日はかげり、いかにも秋らしい感じがしました。あたりはだんだん薄暗くなって、ぶらぶらしておりましても、なんだか二人とも気が滅入ってくるようでございました。『なあ、イリューシャ、どんな風にして旅立ちの用意をしたものかな』とわたくしが申しました。やはり昨日の一件に話をもっていこうと思いましたので。ところが、やはり黙っているじゃありませんか。気がついてみると、あれの指が私の掌の中で震えているのです。ああ、これはいかん、何か新しいことがあるんだな、と、わたしは思いました。そのうちに、ちょうど今と同じようにこの石の所までやって来て、わたしはその上に腰をかけました。すると、空には紙鳶《たこ》がどっさり上がっていて、ぶんぶんうなったり、ぱたぱた音を立てたりしていました。ちょうど紙鳶《たこ》の時節なものですから。『おい、イリューシャ、おれたちもひとつ去年の紙鳶《たこ》を上げようじゃないか。お父さんが繕ってやるよ。いったい、おまえ、どこにしまったんだえ?』と聞きましたが、あれはやはり黙って、そっぽを向きながら、わたしに横顔を見せて立っているんでございますよ。そのとき、疾風《はやて》が吹いて来まして、砂を吹き上げました。……それで、あの子はいきなりわたしに飛びかかって、小さな両手でわたくしの首筋に抱きついて、じっとしめつけるのでした。御承知でしょうが、無口でいても、気位の高い子供は、いつまでも肚《はら》の中で涙を押えているものですが、非常な悲しみに襲われてやりきれなくなると、もうそのときは涙が流れるのでなくって、まるで小川がほとばしるようでございますよ。その暖かい涙がほとばしって、わたしの顔は、たちまちずぶぬれになってしまいました。あの子はまるで引きつけたように、しゃくりあげて泣きながら、身震いをして、一生懸命にわたくしを抱きしめるじゃありませんか。わたくしはじっと石の上に坐っておりました。『父ちゃん』とあの子がわめくのでございます。『父ちゃん、あいつは父ちゃんになんて恥をかかしたんだろうね!』そこでわたくしももらい泣きをしましたんですよ。二人は石の上に坐って、抱き合ったまま震えておりました。『父ちゃん、父ちゃん!』とあれが言えば、わたしも、『イリューシャ、イリューシャ』と申します。そのとき誰も二人を見た者はございません。ただ神様だけは御覧くだすって、出勤簿につけてくだすったろうと存じま
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