いましたね!』『しかたがないよ、イリューシャ』とわたしは言いました。『あいつと仲なおりしちゃいけないよ、父ちゃん。だって学校で皆が言うんだもの、父ちゃんが仲なおりのために、あいつから十ルーブルもらったなんて』『そんなことがあるもんか、イリューシャ、もうこうなったら、どんなことがあっても、あいつから金なんぞもらいやしないよ』すると、あれはぶるぶる身震いして、いきなり両手でわたくしの手を取って接吻しながら、『父ちゃん、あいつに決闘を申しこんでください。だって、学校でみんなが言うんだもの、父ちゃんは臆病だから決闘を申しこめないんだ、それで、あいつから十ルーブルもらったんだなんてばかにするんだもの』『イリューシャ、あいつに決闘を申しこむわけにはいかないんだよ』と答えて、わたくしは、たった今あなたにお話ししたことを、あっさりと聞かしてやったんです。あれはじっと聞いておりましたが、『父ちゃん、それでもやっぱり、仲なおりをしないでちょうだい。僕は大人になったら、決闘を申しこんで、あいつを殺してやるんだ!』と言うんです。眼を光らせましてね。まあ、それでも、やはり、わたしは父親でございますから、ひとこと本当のことを教えてやらなければなりません。で、『たとい、決闘になっても、人を殺すのはいけないことだ』とこう言い聞かせますと、『父ちゃん、僕、大人になったら、あいつを打ち据えてやるんだ。僕、自分のサーベルであいつのサーベルをたたき落として、あいつに飛びかかって、倒してやるんだ。そしてね、あいつの頭の上にサーベルを振り上げて、「いますぐにでも殺せるんだけれど、勘弁してやる、ありがたく思え!」って言ってやるんだ……』って。どうでしょう、あなた、どうでしょう、この二日のあいだに、こんな段取りが、あの小さな頭にちゃんとできてるじゃございませんか。あれは、昼も夜もこのことばかり考え通して、きっと、うわごとにまで言ったんでしょうよ。ところで、学校から、ひどい目にあって帰って来るってことは、やっと一昨日、わかったばかりなんでございますよ。あなたのおっしゃるとおり、もう、あの子を学校へはけっしてやりますまい。あれが組じゅうの者を向こうへまわして、自分から腹を立てて、胸がいっぱいになってみんなに喧嘩《けんか》を売るということを聞いたとき、わたしはあれのことが気になって、たまらなかったんでございますよ。それ
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