ながら、引き伸ばしたような、臆面もなく意地の悪い声を立てて笑いだした。
「みんなわしが帰ってしまったと思っていたのに、わしはほうら、このとおりさ!」と彼は広間じゅうに響きわたるような声でわめいた。
一瞬間、人々はじっと彼の顔を見つめながら、押し黙った。今にも何か忌まわしいばかげた事件がもちあがって、きっと醜態をさらけ出すに違いないと、一同は直覚したのである。ことにミウーソフはこのうえなく優しい気分から、たちまちにしてこのうえなく獰猛《どうもう》な気分に変わってしまった。彼の心の中で消滅し鎮静したすべてのものが、一どきによみがえって頭をもたげたのである。
「だめだ、もうこれは我慢ができない!」と彼は叫んだ。「断然、できない……絶対にできない!」
かっと血が頭に突き上がった。彼は言句につまったが、もはやことばどころではなかった。彼は自分の帽子を引っつかんだ。
「いったいあの人は何ができないというんだろう?」とフョードル・パーヴロヴィッチがわめき立てた。「何が『絶対にできない、どうしてもできない』んだろう? 方丈様、はいってもよろしゅうございますかね? 御招待にあずかった一人でございますが?」
「それはようこそ、さあおはいりくだされ」院長は答えた。「皆様、まことに失礼ながら」と彼はつけ加えた、「心の底からのお願いでござります。一時のいさかいを捨てて、この平和な食事のあいだに、神に祈りを捧げながら、血縁の和楽と愛の中に一致和合してくださりませ……」
「いや、いや、だめなことです!」とミウーソフはわれを忘れて叫んだ。
「ミウーソフさんがだめなら、わしもやっぱりだめですわい。わしも帰ります。わしはそのつもりで来たんですよ。もうこうなればミウーソフさんといっしょにどこへでも行きます。ミウーソフさんがお帰りなら、わしも帰るし、お残りなら、わしも残ります。あなたが血縁の和楽とおっしゃたのが、格別ミウーソフさんの胸にこたえたのですよ、院長様。あの人は自分を、わしの親類だと認めておらんのですからな。そうだろう、フォン・ゾン? そら、そこに立っておるのがフォン・ゾンでさあ。御機嫌さん、フォン・ゾン!」
「あなたは……わたくしにおっしゃるので?」地主のマクシーモフは唖然《あぜん》たるかたちで口ごもった。
「むろんおまえにだよ」とフョードル・パーヴロヴィッチはどなった。「でなかったら誰に
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