ますよ、フョードル・パーヴロヴィッチ。それも、いいですか、永久にですよ。それはそうと、さっきのあの坊主はどこへ行ったんだろう?」
しかし、先刻、修道院長からの食事の招待を伝えた『あの坊主』はあまり長く待たせはしなかった。一行が長老の庵室の階段をおりると、すぐに彼は、まるでずっとそこに待ち受けていたように、さっそく出迎えたのである。
「神父さん、まことに恐縮ですが、わたくしの深い尊敬を修道院長にお伝えくだすったうえで、急に思いがけない事情が起こりましたため、まことに残念ですけれど、どうしても、お食事をいただくわけにまいりませんからと、このミウーソフになり代わって、あなたからよろしくおわびをしてくださいませんか」と、いらいらした調子のミウーソフは僧に向かって言った。
「その思いがけない事情というのは、わしのことでがしょう!」とすぐにフョードル・パーヴロヴィッチがあげ足を取った。「もし神父さん、このミウーソフさんはね、わしといっしょに残りたくないから、ああ言われるんですよ。さもなければ、すぐに出かけられるはずなんで。ね、だからおいでなさいよ、ミウーソフさん、修道院長のとこへ顔をお出しなさい。そして――よろしく召しあがれ! ようがすかね、あんたよりわしのほうが御免こうむりますわい。帰ります、帰ります、帰って家で食べましょうわい。ここではとてもそんな勇気がありませんからなあ、うちの大切な親類のミウーソフさん」
「僕はあなたと親類でもないし、これまで親類だったこともありませんよ、本当にあなたはげすな人だ!」
「わしはあんたを怒らせようと思って、わざと言ったんですよ。だって、あんたは親類だと言われるのが、ばかにお嫌いですからな。しかし、あんたがなんとごまかしなさっても、やっぱり親類にはちがいありませんよ。それは寺暦を繰ってみれば証明できまさあね。ところがイワン・フョードロヴィッチ、おまえもなんなら残るがいいよ、わしが時刻を見はからって馬車をよこしてやるからな。ミウーソフさん、あなたは礼儀からいっても、修道院長のとこへ顔を出さなくちゃなりませんて、そしてわしたちがあんたと長老のところで騒いだことを、おわびしなくちゃなりませんて……」
「あなたは本当に帰るんですか? 嘘をおっしゃるんじゃありませんね?」
「ミウーソフさん、あんなことのあった後で、どうしてそんな元気があるものですか。
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