屏風祭
上村松園

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 京都という町ほど祭の多いところも全国ですくないだろう。
 そのどの祭も絢爛として天下に名を知られたものばかりだ。時代祭、染織祭、祇園祭などが代表的なものとされているが、その祇園の祭を一名屏風祭とも称ぶ――私にとって、この屏風祭は他のどの祭よりも愉しかったものである。

 祇園祭になると四条通りの祇園界隈では、その家の秘蔵の屏風を表玄関の間に飾って道ゆくひとに観せるのであるが、私はそれらの屏風を窺いて廻っては、いい絵があると、
「ちょっとごめんやすしゃ、屏風拝見させていただきます」
 そう言って玄関の間にあがらせてもらい、屏風の前に坐りこんで縮図帖を拡げてうつさせていただくのである。

 永徳とか、宗達とか、雪舟とか、芦雪だとか、元信だとか、あるいは大雅堂、応挙とか――。とにかく国宝級のものもずいぶんとあって、それを一枚うつすのにすくなくても二日は見積もらなければならないものもあるから、年たった一度、二日間の祇園祭で
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