三時間でも平気で待たしておく。芝居のはてるまで、何時間でも待っているといった有様であった。化粧品でも、毛糸でも、綿布でもふんだんに店頭に積んである。

        支那の芝居

 上海のユダヤ人の経営している大きなホテル、十一階建てのホテルがある。その五、六階から下をみおろすと、向うが海岸みたいなところになっている。そこを自動車が数珠つなぎのようになって並んでいる。ホテルの表でも必ず自動車が五、六台は止まっている。少しも自動車に不自由をすることはない。
 私はこの上海に四日ほどいた。その間に軍の慰問をした。病院にも、鉄砲の玉があたっていて今だに弾痕が残っていて、激戦の日がおもわれるのであった。病院には傷病兵が沢山おられた。私たちがこうしてお訪ねすると皆が非常によろこんで下すったのは私にもうれしいものであった。そしていろいろと歓待していただいたのであった。
 上海神社というのへ参詣する。十一月三日はこちらの明治節のいい日であったので、結婚式が幾組もあった。白装束のや三つ衣裳のあげ帽子をかぶったうら若いお嫁さんがいて、それはいずれも日本の娘さんであった。日本人同志の結婚である。
 私は
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