なか深い趣味を有して居られるということがうかがわれて頭がさがるのを覚えた。

        光華門

 翌日、この地に博物館があるというので、それをさっそく観に出かけた。博物館では、きっと昔の人のかいたいい作品が数多く観られることであろうと楽しみにして出かけてみたが、中へはいってみると案に相違して何もこれというほどの観ごたえのあるものがなかった。
 玉石の大きな盤にこまかな文字を書いたものや、乾隆の墨や朱などが沢山あり、その他書の巻子本もあったが、絵画の点ではあれだけの絵画国でありながら見るべきものの一つもなかったというのは、いかにも淋しいおもいがした。
 他には石仏の重い、動かせないようなものがあったり、動物の剥製などがあった。虎や豹や鳥の剥製をみた。
 日本の博物館のように、何時でも行きさえすれば見られるというのではなく、前から申し込んでおいて行かなければならない、私たちが出かけて行ってみると、一つ一つ部屋を鍵であけて観せてくれるという有様であった。
 日本は日本の国体がこういう国体である。万邦無比の国体だから古来の名作だけについて考えてみても数々のものが古くから散じたり、滅びた
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