りしないでちゃんと残っている。
 日本の名家やお寺に行くと、日本古来の名作のみならず、支那の名作逸品が大切に保存されている。大切に異国の文化が保存されきたったのである。これは何という有難いことであろうか。日本の国民として、大きな誇りとよろこびを感ずるのである。ところが支那ではそういうものがなくなっている。支那はああいう打ちつづく革命のために、自国の貴重な絵画を散じほうむってしまったのであるが、彼《か》の国のために惜しんでもあまりあるものがある。
 それから今度の戦蹟を歩いてみた。光華門を訪うた。折りよくこの戦の時、直接戦争にたずさわっておられた将校の方がおられて、当時の皇軍の奮闘奮戦の模様をいろいろとつぶさに御説明して下さった。城門の上にのぼって、あのあたりに敵がいてこういう攻防戦が展開されたと言ってまことに手にとるように物語って下すった。今ここにあるいているところは支那兵の死骸でいっぱいであった、などとも言われ、城門の下のところに土饅頭の小高いのが彼処此処にみられた。
 松篁の行った時にはまだ骨がところどころに残っていたそうであって、雨などにさらされて秋草がそこに咲いていたりして、な
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