もわせる、そんな子供も交っているのを見受けたのである。

        煙雨楼

 抗州から上海への帰路、嘉興の煙雨楼というのに立ち寄ってみた。
 嘉興という処はちょっと島みたいになっている。私の泊った家は、外から見ると支那風になっているが、内部は日本風に適した宿屋であった。欄干は支那風にしていて、庭園に太湖|石《せき》などがおいてあった。
 この宿に泊って、朝、手水を使うていると、とても巨きな鳥が人間になれて近々とやって来る。白と黒との染め分けになっている鵲である。これは支那鳥などと俗に言われている、これが沢山いた。しかし日本で見受けるような真黒の鳥もいた。
 煙雨楼へゆくには自動車からおりて少し歩いて、それから船にのってゆくのだが、その船を姑娘船という。若い娘が船を漕いでゆくのもある。姑娘のきれいなのが船をこぐのだという。この船の中が彼女らにとっては自らの家なのである。生活のすべてなのである。私もその船へはいって姑娘を写生した。船の中に赤い毛布をのばして敷き、それにくるまってねるのである。狭い船を自分の家にして住まっている。船には網代の苫のようなものが三つほどあって、真中に鏡台や
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