う宿に泊った。昼の二時頃、軍部と軍の病院とを訪問した。それから日の暮れ前にこの宿へついた。私はここで熱を出してしまった。
 実は上海にいたとき風邪をひいたのであった。抗州へ出発するという前の晩に、上海でダンスホールを見に行った。そのことはすでに前に記したが、そのダンスホールは広いホールになっている。その真中は板敷であった。そこでちょっとさむいなと感じた。その時はすでに風邪をひいていたらしい。
 抗州の宿についてみると、何の気なしでいたのだが、しきりとくしゃみが出た。それで薬を呑んで床にはいったのであった。体温計ではかってみると三十七度八分ほど熱が出ていた。お薬を呑んであたたかくして静かに床についたのであった。翌日になってみるとやはり熱がひかないので医者が来て、あたたかくして寝ているとよいというので、この日一日中床についていた。その翌日は、幸いにも熱が下ったが、外へ出るのはひかえて、三日ほどはその宿で静養していたのであった。そして四日目は抗州の山手に二つばかりある寺をみに行った。寺は玉泉寺というのと雲林院である。ここはやはり皇軍の進撃した戦蹟なのであった。山門なども半分はくだけていた。山
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