方に、にやけた男が提琴をひいている、するとやがてそこへ芸者が出てくるのである。芸者は頬紅をつけている、そして今の提琴をひいている男の隣に腰をかけてその楽器に合わせて何か知ら意味の分らない唄を歌うのである。唄が終るとお茶をのんですぐ帰ってしまう。その次に来た芸者も同じように唄を歌って帰ってゆく。これは芸者をみただけなのであったからそうなのかも知れないが、この女たちといい、この部屋といい、どこが美しいというのでもない。美人だというのでもない。そういうところでも男は遊びにゆくものとみえる。やがて私はそうした異様な感慨にふけっていると、白粉気のない若い年頃の芸者が歌を唄うのが専門であるらしい。楽器を演奏するのは男の役目らしい。ここへは駅長さんも一緒に来てくれた。大体駅長さんはその土地、土地のいろいろな状況に通じた人であって、駅に下車するといつも駅長室で私はそれぞれの駅長さんに逢って、いろいろと案内してもらうのであった。揚州へ行ったときもおまんじゅう屋をみせてもらったりした。
雲林寺
上海から抗州へ行った。抗州では西湖のいちばんよくみえる高台になったところにある西冷飯店とい
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