迷彩
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)脱《ぬ》けている
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     ○

 この間私はある方面から質のいい古い唐紙を手に入れましたので、戯れに興味描きを試みまして、知合いの人にも贈ったりしました。唐紙の古いのは、ガサガサした塵埃が脱《ぬ》けているような気がして大そう筆の運びがいいように思います。紙もそうですが、画絹も質《たち》のよし悪しで、仕上がった後に画品への関係がよほどあるように思います。画絹の質は、人によっていろいろ好き嫌いがあるのでしょうから、一概には言えないと思いますが、私は西陣のものを用いることにきめています。東《ひがし》の絹は質がしゃんとしていますし、それに色も大そう白いのですから、見つけはちょっと佳《よ》いようですけれど、使ってみると何かごそついて私にはどうも描きにくいのです。西陣の絹は色も少し黄黒いようですが、用いて見て肌が細かで、画の仕上がりがいいように思います。
 しかし、絹を先方から持ちこまれて、自然それに画を描かなければならないことが間々《まま》あります。そういう時には、やはりその絹地が先方の好みによるものだろう
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