浮世絵画家の肉筆
――花は霞を透してひとしおの風情があるもの――
上村松園
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)屏風《びょうぶ》
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浮世絵画家の肉筆というものは、錦絵とはちがった別の味わいがあるものですが、こんど蒐集陳列されたものは、屏風《びょうぶ》、掛物、巻、画帖など種々な形のものがあって、しかも何しろ二百点ばかりもあったろうと思いますから、こういう展覧会としても、なかなか見ごたえのあるものでした。私も一覧いたしまして、少なからぬ面白みを感じたしだいです。
この肉筆物はもっぱら寛永前後のものが、中心に集められてあるもののようで、比較的錦絵の盛んだった近世の作家のものが、少なかったように思います。たとえは明治時代に入ってからの大蘇《たいそ》芳年といったような人などのものは、つい見かけないようでした。
もっとも、寛永前後のものを主にされてあるように感じましたのは、その時分の無落款《むらっかん》のものに極めて佳《よ》いものが多かったからかも知れませんが、兎に角近世作家のものが、もっとあってもいいと思ったほどでした。
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