帝展の美人画
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)吃驚《びっく》り

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)筆一|途《すじ》
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 内緒でこっそりと東京まで帝展を見に行って来ました。
 この頃の帝展はいつの間にか、私にはしっくりしないものになっているような気がします。誰の作品の何処がどうというのではありませんが、あの会場にみちあふれているケバケバしいものがいやだと思います。どぎつい岩ものをゴテゴテと盛上げて、それで厚味があるとかいう風に考えられてでもいるような作が、あの広い会場を一杯に占領しているのを見ますと私はただ見渡しただけで吃驚《びっく》りさせられるばかりでした。

 あれでないと近頃の大会場芸術とやらには、不相応なのかも知れません、ああしないと、通りすがりの観衆の眼を惹かないのかも知れません。ですけれどもあんな調子では、日本画はだんだん堕《お》ちて行くばかりではないかという気がします。画品などというものは、捜し廻っても何処にもありはしません、下卑た品のない、薄ッぺらなけばけばした絵ばかり目につきます。それがモダンというもので
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