大田垣蓮月尼のこと
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)充《あ》て

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(例)[#地付き](昭和二十年)
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 毅然たる中に、つつましやかさ、優しさ、女らしさを備えていることは、日本女性の持つ美徳でありこれあってはじめて、いざという場合真の強さが発揮される。
 大田垣蓮月が、維新の混乱期にあって女ながら日本のゆくべき道を極めてあやまらなかったことは、自ずから皇国護持の精神を発揮したものといってよい。
 しかも、内に滔々たる勤皇の大志に燃えながら、その行いは極めて女らしく、名利を求めず、富貴を望まず、自詠の歌を書き、陶器を焼いて生活の資に充《あ》て、他に齎《もたら》すところ厚く、自らは乏しくつつましく暮し、謙虚さは失わなかった姿こそ、まことに日本女性の鑑《かがみ》であり、私達にこの厳しい時局下ゆくべき道を示してくれているように思える。
 尼は当時京都に集まる勤皇の志士から慈母のごとく慕われたが、自らは聊《いささか》も表立つことはなく、あくまで女らしい床しさに終始した。あの毅然たる中に持ちつづけた
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