法なのである。
 易者は私の四柱をしらべていたが、
「こらえらいええ四柱や、この子は名をあげるぜ」
 と言った。母は大いに悦んで、易者に、
「おおきに、おおきに」
 と何遍も頭をさげていたのを覚えている。

 私はたいてい女性の絵ばかり描いている。
 しかし、女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない。

 一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香り高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである。

 その絵をみていると邪念の起こらない、またよこしまな心を持っている人でも、その絵に感化されて邪念が清められる……といった絵こそ私の願うところのものである。

 芸術を以て人を済度する。
 これくらいの自負を画家は持つべきである。

 よい人間でなければよい芸術は生まれない。
 これは絵でも文学でも、その他の芸術家全体に言える言葉である。
 よい芸術を生んでいる芸術家に、悪い人は古来一人もいない。
 みなそれぞれ人格の高い人ばかりである。

 真・善・美の極地に達した本格的な美人画を描きたい。

 私の美人画は、単にきれいな女の人を写実的に描くのではなく、写実は写
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