けです。
私も遑《いとま》さえあったら、その見聞した明治女風俗を、何かの折々には描いて置きたいと思っております。
○
京の花は、どこもかしこも俗了《ぞくりょう》でいけません。嵐山も円山もわるいことはないのですが、何しろ大そうな人出でワイワイいっておりますから、ほんとうの花の趣きを味わいかねます。
京には、花の寺の保勝会というものがありまして、年に僅か二円の会費を納めますと、花の時分にそこへ招待をうけまして、一日ゆっくり花を見て、食事からお茶から、休憩なども自由に出来るようになっております。
花の寺と申しますのは、その名はきいておりますが、何しろ常には大そう交通の不便な土地ですから、めったに行けるところではございませんが、花はほんとうに幽邃《ゆうすい》で、境地はいたって静かですし少しも雑沓《ざっとう》などは致しませんから、ゆっくりした気もちで半日遊んでいますと、これこそほんとの花見だと納得がまいります。
花の寺は西行法師に縁《ちなみ》のある古いお寺で、向う町から乗合《バス》でゆけますが、何しろ、寺の手前二十町のところまでしかゆきませんから、道をおっくうに思う
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