女の話・花の話
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)画債《がさい》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)このくらい[#「このくらい」は底本では「このくら」]
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     ○

 責任のある画債《がさい》を少しずつ果していっておりますが、なかなか埓《らち》があきません。それに五月一日からの京都市主催の綜合展の出品画――長いこと帝展をやすんでおりますから、その埋め合せと申すのでもありませんが、今度は何か描いてみようと思い立ちまして、二尺八寸幅の横物に、明治十二、三年から四、五年どこの、女風俗を画いております。
 あの頃のことは、私も幼な心に薄々と覚えておりまして、思い出してみても物なつかしいような気がいたします。
 図は、二十七、八から三十くらいの中嫁御《ちゅうよめご》が――眉を剃ったあとの、薄青い、ほん色白《いろしろ》の京の嫁御の半身像でして、日傘をもった一人立ちのものです。

 私の母は、よく髪を結いに出かけたり、また女髪結がうちにまいったり致しました。私は幼い頃から髪を結うことがほんに好きなものでしたから、よく傍
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