の芸術の上にもスランプが来て、どうにも切り抜けられない苦しみをああいう画材にもとめて、それに一念をぶちこんだのでありましょう。
あの絵は大正七年に描いたもので、文展に出品したものであります。
あの焔を描くと、不思議と私の境地もなごやみまして、その次に描いたのが「天女」でした。
これは焔の女と正反対のやさしい天女の天上に舞いのぼる姿ですが――行きづまったときとか、仕事の上でどうにもならなかった時には、思いきってああいう風な、大胆な仕事をするのも、局面打開の一策ともなるのではないでしょうか。あれは今憶い出しても、画中の人物に恐ろしさを感じるのであります。
序の舞
「序の舞」は昭和十一年度、文部省美術展覧会に出品しました、私の作品の中でも力作であります。
この絵は、私の理想の女性の最高のものと言っていい、自分でも気に入っている「女性の姿」であります。
この絵は現代上流家庭の令嬢風俗を描いた作品ですが、仕舞の中でも序の舞はごく静かで上品な気分のするものでありますから、そこをねらって優美なうちにも毅然として犯しがたい女性の気品を描いたつもりです。
序の舞は、
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