最初の出品画
――四季美人図――
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)絵筋《たち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)子供らしい気ばり[#「気ばり」に傍点]で
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 今でこそ洋画にしろ日本画にしろ、モデルというものが大きな問題となっているが、今から四、五十年も前の我が画壇をふり返ってみると、そんなものはまるでなかった。

 私の最初の展覧会出品画は「四季美人図」であって、これは明治二十三年、東京で開かれた第三回勧業博覧会に出品したもので、当時まだ十六歳の若年であった。
 今から思ってみれば、若々しく子供っぽいものであったが、モデルというものがないので鏡台にむかって自分のいろいろな姿態、ポーズというか、その格好を写しては下絵にとり、こうして最初の「四季美人図」が出来上ったのである。

「四季美人図」というのは、幅二尺五寸、竪五尺の絹本に四人の女性人物が描かれてあり、それぞれ春夏秋冬の一時季を表わしている、といった極く簡単なもので、まず春には一ばん年端の若い娘を描き、梅と椿の花を生けている処。夏は前の娘よりはいくらか年の
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